神経サイバネ序説

引き続き医大の図書館から。

セル・オートマトンチューリング完全であるということはウィキペディアにも書かれているとおりだが、一見、直感に反するように思える。しかし、チューリング機械における記憶装置(テープ)を、「任意のセルは、左右2つのセルに隣接していて、なおかつ左右2つのセルからしか影響を受けない、一次元のライフゲームである」と考えれば、一次元のセル・オートマトンチューリング等価である、と分かる....と思う(私はそのように理解した)。一次元のセル・オートマトンチューリング完全であれば、二次元のセル・オートマトン(たとえば、方眼紙のマス目がならんでいるようなもの)も、当然チューリング完全である。

では、セル・オートマトンを用いた計算機には、どんなものが考えられるだろうか。粘菌コンピュータ半導体と電気でトレースしたようなものになるかもしれない。この生物を計算機械でトレースする研究はサイバネティックス(サイバネ)と呼ばれる。

本書は1962年にソビエトで発刊され、1966年に日本語に翻訳された。第一章の冒頭を引用してみよう。

エヌ・ウィナー(N.Wiener)はサイバネを生物および機械における制御と通信との過程に関する科学と定義した。現在、この概念の内容をいっそう精密なものにしようというもくろみがある。とくに、サイバネの根本問題は思考と計算機の能力との相互関係という問題であって、その基本的方法と考えられているのは制御系の機能をアルゴリズム的に記述する方法である。

本書発刊時点で、著者はサイバネティックスの将来について非常に楽観的である。

現在この過程はすでにはじまった。しかもそのイニシアチヴをとった者は技術(者)で、それは、ますます完全な自動計算・解析機、自動整調機械および記憶機械の組立てにさいして、全く無意識に「生物学的に思考する」ことを学んだわけである。このようにして技術(者)は多くの生物学者がうまく探しあてなかったまさにその途へ出たわけである.......私は、ここで正しい途がえらばれたことを、少しも疑わない。
(p.135)[文中の()内は引用者補足]

しかし、ノイマン型コンピュータの隆盛とともに、サイバネティックスの研究は忘れ去られた。