理解しやすい数学Ⅰ+A

理解しやすい数学?+A 新課程版 (理解しやすい 新課程版)

理解しやすい数学?+A 新課程版 (理解しやすい 新課程版)

30代のおっさんの脳が如何に錆びついているのか、ということを知るためには高校数学の参考書というのは格好の材料だ。

本書は藤田宏という戦前生まれの人が執筆、編集をしている。
戦前生まれの人の書いた参考書というのは、固そうで、わかり易く教えようという親切心がなさそうで、最初は気が進まなかった。
しかし、よく考えてみると私は受験生ではないし、仕事で使うわけでもないので、
「ある程度、噛み応えのある参考書のほうがいいかもしらん」
と思って本書を買った。

数学が生まれる物語とパラレルに読んでいくと結構面白かった。
ただ、お手軽な受験ハウツーテクニックみたいなのはあんまり書いてない。
あと、内容が「解説、基本問題、標準問題、応用問題」とレンジを広くとっているので、受験生には向かないと思う。
受験生は、もっと自分の実力や志望校のレベルに特化した参考書を買った方がいい。

それにしても30代のおっさんの脳は錆びついている。
例えば、466ページ....

pは素数でrは1≦r≦p-1を満たす自然数であるとき、pCr はpの倍数であることを証明せよ。 (奈良女子大)

この問題は、いかにも「ちょっと頭をヒネれば、簡単に解けますよ」というような雰囲気に満ちている。
世の中、何かがおかしい。
こういう問題を、まだ年端のいかない女子高生が解いているのかと思うと....そして俺には解けないと思うと....腹が立ってくる。

しかし、それももう過去の話だ。今やそんな事で思い煩う必要はなくなった。
本書を読み終え、私はド・モルガンの法則メネラウスの定理チェバの定理も完璧に理解した。
世界は正しい方向に向かって歩を進めているようだ。

注:
引用文中の"C"は組み合わせ記号。

数の誕生

数の誕生 (数学が生まれる物語 1)

数の誕生 (数学が生まれる物語 1)

私は数学はついては殆ど無視をして学生生活を送った。この齡になって思うのは、「学生が数学に興味を持つか否かは、かなり教師の教え方に左右されるのではないか」ということだ。
思い返してみるに、私が授業を受けた数学の教師は何故かほぼ全員スカだった。

数学は面白く教えようと思えば、いくらでも面白くできるし、無味乾燥に教えようと思えば、いくらでもそうできるのではないか。
たとえば、ペアノの公理について....。

ペアノの公理を習ったときの私の感想は
「なぜこんな当たり前のことを変ちくりんに定義しなければいけないのか。しかも定義の最後の部分集合云々の部分って本当に必要なの? 二重定義じゃないの」
というものだった。そして
加算は自然数について閉じている....って何? 意味が分からん」
とか思っていた。
「しょうがない。まぁ教科書に閉じていると書いてあるんだから、そういうものだろう」
と思うことにした。
「対偶をとる」...とかは、無視していた。

しかし計算機科学の世界では、人間にとって一見当たり前のことをどう定義するのか、というのは結構重要だったりする。
コンピュータは定義されたことを、定義されたようにしか理解しないですからね。
「なるほどね、こういう時に必要になってくるんだね」と思った。時すでに遅しだが。
そして公理というものは(ペアノの公理でもなんでも)、常に抽象化(object-oriented)についての重要な示唆を含んでいる。

本書は高校レベルの数学のエッセンスを中学生や小学高学年の児童のために、やさしく解説したシリーズの第一巻。
高校の教科書(或いは参考書)と同時にパラレルに読んでいくと結構面白い。
ある程度、ダメな教師の代替物になる。

Fossil Woof Quirky: バリーさんのブログ翻訳

バリーさんのブログの翻訳。2014/01/18のもの。
これまでのWoofのリポジトリを閉じるとのこと。
ダウンロードしたい人はお早めに。

ダウンロードについて、日本語版フォーラムで質問したら、すぐ返信があった。
どうも有り難うございます。

オリジナル:
http://bkhome.org/news/?viewDetailed=00045

Multiarch sub-directories
(複数のアーキテクチャに対応したディレクトリ構造)

幾つかのメジャーなディストリは"multi-architecture sub-directories(複数のアーキテクチャに対応したディレクトリ構造)"を持つようになっています。例えば、DebianUbuntuでは現在/usr/lib/i386-linux-gnuというディレクトリがあり、ここに以前は/usr/libにあったライブラリファイルが含まれています。

これはパピーでは非常に多くの問題を引き起こしますし、私は循環的なリンク処理をすることでそれを回避してきました。例えば、/usr/lib/i386-linux-gnuは/usr/libへのリンクです。いくらかの注意が必要ですが、これはうまく機能します。このテクニックは現在までの全てのパピーで用いられてきました。

私は以前に一度、正しいマルチ・アーキテクチャ・サブディレクトリ構成をサポートしようと試みたことがありますが、しかしそれは複雑になり過ぎました。数日前01mickoさんから、これ以上思案することはないのかと尋ねられましたが、私の答えはノーでした。

しかしながら、じっくり考えてみました。私は現在QuirkyをUbuntu Trusty Tahr のDEBパッケージでビルドしている--そう、昨日のブログにヒントがあったように--Quirky Tahrです! このQuirkyでは、正しいマルチ・アーキテクチャ・サブディレクトリ構造を何とかして手に入れたいものです。それで、私は改めて見直してみました....。

主な問題はWoofのパッケージ・テンプレートにありました。マルチ・アーキテクチャのためのサブディレクトリを考慮しない単一のディレクトリ構造になっています。それで、私は幾つかの角度から検討して(訳注: 原文はlateral thinking= 水平思考)、そして現在、正しいマルチ・アーキテクチャ・サブディレクトリを持つQuirky Tahr をUSBスティックから起動させています。そしてこの文をポストしています。

Woofのなかで編集したスクリプトはたった二つで、2createpackagesと3builddistroです。同時にパッケージ・テンプレートの殆どのFIXUPHACKスクリプトを編集しました。テンプレートはその他の変更を必要としませんし、これでマルチ・アーキテクチャ・サブディレクトリの有る無しに関わらず機能するはずです。

Quirky Tahrを始めて起動させた後、3builddistroに修正すべきバグを一つ見つけました。今晩修正するつもりです。
その後、Woof-CE(コミュニティ・エディション)の人達がこれを含めるかどうかの検討用に、tar ballを作成する予定です。

Quirky build system(ビルドシステム)

私はWoofによってQuirky 6.xをビルドしましたし、その過程のプロセスはすべてQuirkyに含まれていますが、しかしながら、Woofそのものをハッキングする必要性を強く感じました。ですので、私はWoofをフォークして"Quirky build system"と名付けました。Quirkyの特性はこちらにだけマージされています。

Quirky build system は、焦点を絞って、Quirkyをビルドするために発展させるつもりです。これはフルインストール・モード、オンリーです。

私はこれをオンラインのFossilやGitリポジトリに置くつもりはありません。代わりに、充分成熟したと判断すれば、tar ballをアップロードする予定です。

Fossil notice(Fossil リポジトリ)

オンライン上にあるWoofのFossilリポジトリは、間もなくremoveする予定です:
http://bkhome.org/fossil/woof2.cgi/home

これはWoof-CEの人達がフォークさせていますが、しかしもし入手したい人がいるなら、すぐそうして下さい。おそらく、一週間以内には消去する予定ですので。

2014/01/18

OpenBSDの資金難についての続報

前回の続き。

電気代が払えずピンチだったOpenBSDプロジェクトだが、相当額の寄付金が集まったようだ。
本の虫にBob Beckさん(なんて覚えやすい名前!)のメールの翻訳がでてる。
http://cpplover.blogspot.jp/2014/01/openbsd_21.html
まあ、よかった。

一度、知り合いの知り合いの税務関係の仕事をしている人に、
「海外の自由ソフトウェア・プロジェクトに寄付した場合、税額控除の対象にならないの?」
と尋ねたことがある。
その人の答えは「まず、無理」とのことだった。

で、その人によると、
「もし、そのプロジェクトが何らかの記憶媒体(CDとか)で配布しているなら、それを購入するのがよい。そうすれば経費で落ちるし、寄付のかわりになる」
とのことだった。

「じゃあ、複数枚を購入するのはどう? Windowsを複数枚(複数ライセンス)購入するのと同じで、経費で落ちるのかな?」
と尋ねると、
「多分、オーケー。技術に対する正当な対価だから」
ということでした。

ところで話題を変えていいかい? ええ、どうぞ。
以前、アメリカ大統領選挙のとき、ヒラリー・クリントンが1日での1000万ドルの献金を集めたことがある。
アメリカ人はなんて政治に熱心なんだと感心した。

東京新聞: 2008年4月24日
http://www.tokyo-np.co.jp/hold/2008/us_president/news/080424-2.html

【'08米大統領選】1日で献金10億円 クリントン氏、勢い強調

米大統領選挙の民主党候補指名を争うヒラリー・クリントン上院議員(60)の陣営は二十三日、前日のペンシルベニア州予備選挙で勝利が決まった後、わずか一時間で三百万ドル(約三億円)以上の献金が集まり、一日で一千万ドル(約十億円)に達すると述べた。

ああ、それに比べて自由ソフトウェア・プロジェクトというのは、なんとささやかなものだろう。

さらば外務省

さらば外務省!―私は小泉首相と売国官僚を許さない

さらば外務省!―私は小泉首相と売国官僚を許さない

小泉純一郎ウォッチャーとして一部で有名(?)な天木直人さんが、最近宗旨変えして小泉元首相を応援している。

天木直人のブログ: 民主革命の最後のチャンスを潰す共産党と宇都宮氏に再考を促す
http://www.amakiblog.com/archives/2014/01/19/

本書は天木さんが外交官人生を棒に振った(要はクビになった)直後に書かれたもの。

本書の主張を要約すると、
・外務省の機関は世界中に分散しており、国民のチェックの目が届きにくい。
・世界中に分散していることで、人事の縦割り横割りがひどく、秘密主義がはびこり、組織としての統率がとれていない。
・政治家は基本的に無能であり、情報収集能力、交渉力、やる気に乏しい。
・外交大使(駐XX大使)の正式名称は「特命全権大使」だが、これは名称と現実の乖離が甚だしい。
....といったところ。

これは、外交や外務省という組織が必然的に孕む問題であり、根本的な解決策はないような気がする。
日本以外の政府はこういった問題に対し、どのような工夫をしているんだろう?

まあ書いていることは、いちいちもっともなんだが、ちょっと罵詈雑言が多くて読んでいてしんどい。
あまり精神状態がよくないなかで書かれたのかもしれない。

姉妹本(?)である「さらば財務相」(これは名著)が辛辣の中にもユーモアを交えて書かれているのとは対象的だ。

アル中病棟 吾妻ひでお

失踪日記2 アル中病棟

失踪日記2 アル中病棟

私は「共有する強い目的を、持っていない人々の集団」が好きだ。
例えば、田舎の予備校の寮、公営住宅自治会、食品衛生管理士の講習会、そして入院患者のための病棟....。
そういう場所を題材にしたルポタージュがあると、ついつい読んでしまう。
多分私は「何の巡り合わせでここに来たのか、どうしてこういう風になったのか分からない」という状況が好きなんだと思う。ちょっと詩的に言うと、人は皆、偶然の旅人なのだ。

本書は失踪日記の続編。失踪日記はホームレス編とアル中病棟編の二部構成だったが、本書はアル中病棟編を詳しく描いたもの。

本書ではかなりコミカルに描かれているが、アル中病棟というのは荒涼とした世界の果てのような場所だ。
しかし、そんな世界の果てのような場所にも、それなりの秩序があり、ドラマがあり、人々は微妙で細々とした連帯感をもって生きている。
読んでいると、「人間の営みってすごいな」と思わされる。改めて言うまでもないが、吾妻ひでおは凄い漫画家だ。

病院からでてきた作者が、周りの風景を見回して、ふと「素面って不思議だ」と呟くシーンがあるが、なにかこっちまで不思議な気分になってくる。

あと、この作品はかなり練り込んで製作されたらしく、背景とかも非常に丁寧に描かれている。
といっても神経症的、病的な丁寧さではなく、非常にユーモラスな感じで、作者が楽しんでいるのが伝わってくる。
大抵のシーンに細かい描き込みがあり、読む度に新しい発見があって楽しい。

慣れると、たまに背景がスカスカなシーンにでくわすと物足りなさを感じてしまうが....
「これは作者が描くのがしんどかったんやろうな(いろんな意味で)」
と思うことにした。

装丁も素晴らしい。
アル中病棟のさまざまな患者(と看護婦、医者)が細かく描写されているのだが、これは同時に作者の心象風景のメタファーでもある。
ちょっと詩的に言うと、人は皆、心の中にさまざまな傷ついた小人を飼っているのだ。

Precise Puppy Linux - 571JP

PrecisePuppy-571日本版がリリースされた。僕はWaryPuppy-511-01JP以来、今回まで開発に関わってなかったので、最近の知識がかなり欠落しているが、若干の感想をば。

今回のヴァージョンは本家版Precise Puppy Linux 5.7.1-retroをベースに製作されている。本家版との一番大きな違いはSeamonkeyが削除されてブラウザがOperaだけになったことだろう。それによりサイズが従来のものとほぼ同じになった(本家版はこれまででサイズが一番大きい)。
また、本家版にはPAE(Physical Address Extension)とnon-PAEの二種類があるが、日本語版はnon-PAEのみ。ただパピーは最軽量級のディストロなので、どちらでも一般ユーザにはそれ程関係ないと思う。

あとは、Ubuntu 12.04 LTS(Precise Pangolin)とバイナリ互換性が(一応)保証されているのでUbuntuパッケージが(一応)すべてインストール可能。
パッケージマネージャから簡単にインストールできる。
パッケージマネージャも何気に進化している。

以下、テクニカル....。

日本語入力はScim+Anthy。これは従来と変わらない。
昨今の日本語入力関連ソフトは随分変化したので、これはちょっと古くさいともいえる。

ソフトウェアの日本語化については、非常に進捗している。
パピーではgtkdialogでGUIアプリを非常にお手軽に作成でき、それが大いに利用されてきたが、国際化に難があった。
現在、gtkdialogはパピー本家開発陣が直接メンテナンスするようになっており、通常のGTKアプリのようにMoファイルが扱えるようになっている。
そして、gtkdialogを使用するアプリは全面的に書き直され、なおかつ日本語版でも積極的な翻訳が行われてきた。
*註 未翻訳(或いは翻訳が退化)したものも若干ある(例えばBcrypt)

システム面は、今回あまり触れてないので、ちょっと分からないが....。
バリーさんは相変わらずDbusが嫌いなようだ。
systemdやeudevについては研究中といったところ。
pup_event_XXX(デーモン)の類がシェルスクリプトからBacon(とC)に置き換えられつつある。これは良いニュースだ。

apstartとかバリーさんは興味がなさそう。
起動スクリプトはそんなに変わってない。起動途中でフレームバッファ画面に切り替わるようになった。
非rootユーザでの使用については、まだ発展途上というかんじ。実装途中で諦めてしまったような感じもするが....。

f2fsは積極的にサポートされてる。インストールの検証は....???。
sfs on the fly(SFSファイルのダイナミック・ロード) は最近はテクニカルな検証が行われている様には見えない。僕の勘違いだろうか? かなりいいアイディアだと思うが....。

Momanagerが導入されて言語パックの作成が容易になった。Momanagerはバリーさんが直接開発している。
Woof(パピーの骨組みみたいなもの)の管理は、以前はバリーさんが書いたBonesというバージョン管理システムで管理されていたが、Fossilに切り替わっている。

相変わらずだがバリーさんは、言語の選り好みが激しい。
Baconというベーシック言語が公式サポートされた。
Pythonは入ってない(開発環境devxには入ってる)。
vala/genie は見捨てられたようだ。

カーネルのヴァージョンは3.2.48(SMP)。

それから、2013年秋にバリーさんがプロジェクト・リーダーを降りた

個人的には、上にも書いたが、gtkdialogが進歩した事が非常に大きい。
gtkdialogは、シェルスクリプトと簡単なXMLの知識があれば、素人でもすぐにGUIアプリが作れるので楽しい。
他のディストリも移植してくれないかしら。