人間機械論

人間機械論―人間の人間的な利用

人間機械論―人間の人間的な利用

図書館シリーズ、続き。

我々は生物と無生物を容易に区別することができる。一見、生物という存在は熱力学の法則に反しているように見える。一体何が、生物を生物たらしめているのだろうか。本書ではその基礎を、通信と制御と定義する。

例えば、アナログ式の時計を考えてみよう。この時計は今日只今の時刻、昨日の同時刻とまったく同じ針の配置をしている。しかし、今日この時計は、昨日の時計の動きを参照にして動いているわけではない。この時計の見かけ上の秩序は、エントロピー増大の法則に(たとえ局所的であっても)逆らっているわけではない。これは、例えば惑星の公転周期にも同じことがいえる。

一方、人間の場合、例えば、毎日決まった時刻に朝食をとる人を考えてみよう。この人物は何らかの方法で外部と「通信」し、過去の行動を参照して自らを「制御」している。この人間によって作り出された秩序は、時計や惑星のそれとは違う。エントロピー増大の法則に逆らうことができる。そして生物史や人類史をみれば明らかなように、ある場合には、その逆行速度を加速させることができる。これは生物の生物的拡張、人間の人間的拡張と呼ばれるべきものだ。

では、機械にはこの人間的拡張を適用することは可能だろうか。
答えはイエス。機械が「通信」と「制御」を拡張していく限り、それは人間的拡張と同義であり、機械は生物的特長を次第に獲得していくだろう。
機械の進歩にも、人類の進歩にも、この「通信」と「制御」というテーマを第一命題として据えていくべきだ。

....本書の要約はこんな感じ(あくまでも感じです)。
本書では、以上のような論旨で、いろいろな社会的なテーマを扱っている。何十年も前に書かれた本だけあって、そのテーマ自体は古くなっているが、考え方自体は全然古くなっていない。