盗賊会社

盗賊会社 (新潮文庫)

盗賊会社 (新潮文庫)

父の付き添いで病院に行った。十五分の診察のために2時間は待たなければいけない。
日本は社会主義国であるという認識をあらたにする。待合所は老人ばかりで、どこの病院はどう、あの医者はこう、などと飽きもせず小声で何時間でも話し込んでいる。社会主義国家での情報交換はこのように行われる。

待合所には星新一の「盗賊会社」の文庫本があった。なんとなく、社会主義国家にふさわしいチョイスだ。星新一なんて小学校以来だが、読むことににする。一編一編がとても短い、待合所で読むにはとてもよい、そして結構面白い。小学生の時分には分からなかった可笑しみがある。なかでも「趣味決定業」という話は気に入った。

...ある日、博士はあらゆる人に最適な趣味を教えてくれるコンピュータを開発する。その人の年齢や性別、性格など必要な情報を入力すれば、その情報を元に、その人に応じた最適な趣味を割り出してくれるのだ。このコンピュータは評判を呼び人気を博した。
ある日、ふと博士は「このコンピュータにとっての最適な趣味は一体何だろう」と思った。そこで、このコンピュータに自分自身の趣味を問い合わせてみることにした。すると...

またある日、博士は「私にとっての最適な趣味は一体何だろう」と思った。そして、博士自身のデータを打ち込み、コンピュータが回答をだすのを待った。でてきた答えは...

...父の名が呼ばれたので、父と私は診察室に入った。診察はあっという間に終わった。血糖値の検査キット30日分(1日3回)を受け取ったが、それは馬鹿みたいに安い値段だった。老人にとっては社会主義もわるくないのかもしれない。

PS.
池田信夫さんの菅直人氏の「雄大な計画」というエントリを読んで以来、これのオチは何だったかなと気になってたが、この話(雄大な計画)も収録されてました。